ことしの水稲を振り返る
−作柄は"平年並み"−


 水不足・空梅雨でスタートした今年の稲作。5月の低温で足踏み状態だった稲の生育はその後の好天候で一気に加速し、概ね順調に推移しました。昨年、相次ぐ襲来で大きな被害を与えた台風ですが、今年は台風14号の豪雨で冠水や土砂流入など大きな被害を引き起こしたものの、その後は天候も安定し収穫は概ね順調に進んでいるようです。昨年が悪かっただけに期待の高まった今年の稲作を振り返ってみます。


ことしの生育概況と作柄

 中国四国農政局から9月27日に発表された9月15日現在の作柄状況によると、広島県では県南部は101、県北部101で、県全体も101の「平年並み」となっています。
 概況としては、今年は概ね気温が高く、日照時間も多かったことから、水稲の生育は良く、出穂期も県平均で平年に比べ4日早くなりました。
 穂数は茎数が平年並みで、1穂あたりのもみ数も平年並みでしたが、登熟は7月後半から8月上旬に降水量が少なく、気温格差が大きかったことから稔実はやや良いことなどから、"やや良"と見込まれます。
病害は、6月が高温・少雨だったこともあり葉いもち病や穂いもち病は少なかったのですが、7月中旬から紋枯病の発生が多くありました。虫害は県南部でコブノメイガ、県全域でカメムシが発生しています。気象災害では、降雨や台風14号による倒伏があったほか、台風14号の大雨・洪水によって冠水・土砂流入が県西部の一部にありました。

粒張り良好!カメムシ斑点米除けば、品質良好!
−ことしの生育の検証−

 台風14号の被害は地域的に大災害になりましたが、昨年のような相次ぐ台風襲来とはならず、概ね好天候で推移した今年は水稲の生育、出穂、収穫ともにまずまずといった状況のようです。「良くできた」という声がある一方で「思ったほどには・・・」と言う声もあるように、農家によって反応もさまざま。そこでNOSAI西部管内の水稲生育状況はどうだったのか、広島県芸北地域事務所地域営農課…神畠義和普及専門員、永井一成主任技師にお伺いしながら、育状況を振りかえってみましょう。
 文章中の気温・日照等については、図表を参照ください。

検証:育苗期
 4月の気温は高めに推移し概ね、健苗ができたと思います。

検証:田植期
 早生品種では4月末〜5月上旬、中生品種は5月中旬を中心に田植えされました。全体的に田植えは早い傾向で、昨年後半に台風の被害を受けた影響があるものと思われます。
5月上中旬は低温で、高標高または冷水水田ほど活着や初期の分けつが遅れ、草丈も短めに推移しました。6月11日に梅雨入りしましたが、高温・多照で分けつや草丈の伸びは一転し、生育はおう盛に。しかし、一部水田では水不足で分けつ抑制及び雑草が繁茂しました。

検証:本田生育期
 順調な生育が続き、幼穂形成期は早生品種で平年よりも4〜5日早かったようです。この傾向は田植えが早く、低標高ほど早くなったようです。葉色は濃い傾向でしたが、普通の水田もありました。出穂は早生品種で平年よりも5〜10日早くなり、特にコシヒカリが顕著でした。中生品種は平年並み〜3日程度早かったようです。穂数、稈長は概ね平年並みでした。

検証:被害
《いもち》
 いもち病は管内で目立った発生はなく、葉いもち・穂いもちともにとても少ない年でした。
《紋枯病》
中生品種を中心に過去10年間で最も多い発生となりました。気候が高温で推移したため、7月に入り急速に病勢が進展しています。"いもち"と比べ防除への意識が少し低いかもしれません。常習化傾向もあり、倒伏を助長する要因にもなっています。
《カメムシ》
 アカスジカスミカメやホソハリカメムシなど、小型、中型のカメムシが多発。特に早生種の防除前に多く見られました。今年はカメムシによる加害米が等級格下げの大きな要因となりそうな見込みです。色彩選別機の導入などにより、カメムシによる着色粒をかなり除去することができるようになってきましたが、着色粒の発生自体は増加傾向にあります。一斉防除を推進している北広島町芸北地域では被害がほとんど発生していない例があるように、地域をあげて被害軽減に取り組む必要があるのかも知れません。
《ウンカ》
トビイロウンカ(秋ウンカ)が県内各地で発生しており、一部で坪枯れもあるようです。《除草》
田植え後の低温で、草の発芽が遅れ、除草剤の使用時期と効果のタイミングがずれたことなどで、ホタルイなどの除草に苦労された農家もあったのではないでしょうか。

検証:収量・品質
 収穫は早めに推移しているようです。茎数はやや多く、穂数は平年並みで、登熟が概ね良好なことから収量・品質ともにまずますで、平年並みといえそうです。

まとめ
 これらのことから今年の水稲の生育は、早めに推移したものの、概ね順調だったようです。異常気象が続く中で今年は久しぶりに「平年並み」な年となったようです。農家によって収量や品質の格差が話題になるのは5月の低温時の対策や施肥、防除の差が出た可能性がありそうです。やはり「丈夫な稲を育てるための土づくり」、「稲の生育・ほ場の条件にあわせた施肥・水管理」など、基本的な生育管理がポイントではないかと思います。




農家のホンネ
あぜばたインタビュー


北広島町(旧千代田町)
今知 毅さん(62)

台風14号が来て倒伏して刈り取りが大変でした、稲の出来は平年作ぐらいだと思います。
 


北広島町(旧豊平町)
森田 洋見さん(54)

今年は、天候が安定していて、早生の出来は良かったと思います。遅ものも平年作は出来ていると思います。


安芸太田町(旧加計町)
佐々木 実さん(76)

台風14号の雨で太田川の河川が決壊。流水・流木・土砂やごみなどで収穫直前のコシヒカリがやられました。


安芸太田町(旧戸河内町)
波佐本 三八雄さん(80)

今年は、分けつ時に少し寒かったので、収量が4石を2〜3斗切った。でも米は良いものができましたよ。


佐伯区湯来町
宮重 毅志生さん(73)

台風で水害にあわれた方は大変なことと思います。我家は台風の影響もなく、このまま猪さえ出なければ順調です。


廿日市市玖島
玉田 彰さん(78)

今年の米は去年より良さそうです。台風で少しこけたけど、起こしたので大丈夫でしたよ。


安佐北区安佐町
大山 忠司さん(67)

ことしは粒も大きく、質のいいコメが収穫できました。無人ヘリの防除も効果的だったと思います。


東区馬木
山本 英雄(71)

今年は出来がいいですね。害虫の防除は8月中旬に1回きり。稲刈りはこれからですが、あとは天気がよければいいね。


吉田町
日野 誠さん(54)

今年の稲作はまずまず。
被害も無く順調でしたよ。
来年もがんばるぞ!


向原町
久保 正さん(72)

台風が来る前に刈り取りをしたので、倒れることもなく順調に収穫ができまた。
収量も平年に比べて良かった。


甲田町
戸島チヤ子さん(66)

今年の秋も無事すめました。ノーサイの網で鹿が入らなくなりました!





適正な水稲損害評価に全力
−みなさんからのご質問にお答えします−

 NOSAI西部では、水稲損害評価野帳(被害申告)を提出されたほ場について、順次損害評価を行っています。ことしは台風による倒伏や豪雨による洪水で冠水・流出、土砂流入など、大きな被害を受けたほ場もあり、NOSAI西部では、坪刈りなど慎重かつ適正な評価に全力を上げており、現在も被害認定の手続きを進めているところです。
 風水害による被害申告が多い今年、みなさんからお問い合わせいただく質問にお答えします。

Q:台風で倒伏したけど、被害になりますか?
A:倒伏そのものは確かに被害ですが、共済金支払対象になるかどうかは、「見込み収穫量」によって算定されます。
 「水稲共済」は"水稲(コメ)の減収に対する補償"をする制度です。倒伏によってある一定の減収量を超えたときに、共済金支払い対象(減収1sあたり226円)となります。等級低下による所得(収入)を補償するものではありません。

Q:大雨で水田の土手が崩れた。復旧費用は補償するのか?
A:水稲共済はコメの減収に対する補償制度です。土手が崩れたことによってコメの収量に一定量以上の減収が生じれば共済金支払い対象になります。水田の土手の復旧費用は水稲共済で補償されるものではありません。

Q:川が増水して水田が収穫前の稲もろとも流出した。被害申告をしたが、共済金はどのようになるのですか?
A: 組合で現地を確認します。
被害申告されたすべてのほ場について「見込み収穫量の推定(検見)」をします。評価の基本はあくまで「収量」です。本来収穫できるはずの"コメ"が流出した場合は減収です。1筆方式で加入の場合は、ほ場1筆ごとに損害評価を行います。補償は最大でそのほ場の基準収穫量の7割【例えば被害を受けたほ場が10eで基準収穫量が450`の場合は(450`×7割×226円=71,190円)】の共済金をお支払いすることになります。