梅雨明けを実感することなく秋を迎えたことしは、台風の心配も絶えず、全国的に“不作"の傾向です。
梅雨入りまでは平年の生育だった水稲は、その後スッキリしないことしの天候に足止めされた格好。
天候不順による不作が確実視される中、標高など作付地の条件や農家の稲作管理が明暗を分けたことしだったようです。




中国四国農政局から9月26日に発表された9月15日現在の作柄状況によると、中国地万の作柄は、山口県、島根県、烏取県で「不良」、広島県、岡山県は「やや不良」となり、平均で指数95の「やや不良」。広島県では県南部は99、県北部98で、平均は98の「やや不良」となっています。
概況としては、県全域で生育期間に低温・日照不足の影響を受け、出穂が4日程度遅延。
もみ数は平年並み、だったものの、登熟は出穂後の低温・日照不足の影響で稔実や粒の肥大やや不艮と見込まれます。病虫害の発生は、天候がいもち病菌の繁殖に好条件でしかも稲自体が軟弱となったため葉いもちが発生、穂いもちも発生したほか、コブノメイガによる被害が多発。全体の被害概況は平年に比べてやや多<なりました。

「1993(H5)年の不作に匹敵するほどよ<ない」という声が多い中、NOSAl西部管内の水稲生育状況はどうだったのか、生育状況を振りかえってみましょう。
それぞれの地域の状況について、山県郡・高田郡地域(=芸北地域)について広島県芸北施域事務所地域営農課-神畠義和普及専門員、中島一喜主任技師および山村哲史、上田伸宏主任技師、広島市区域・佐伯郡・廿日市市・大竹市(=広島地域)について広島県広島地域事務所地域営農課-山本真之技師にたずねました。
文章中の気温・日照等については、気象図を参照ください。





>>検証:育苗期
「芸北地域」
全体的には順調だったと言えるのでは。育苗期間の4月は気温が平年より高く、日照時間が少なめだったことから徒長した苗がみられました。また一部農家では苗立枯病、細菌病が発生しました。

「広島地域」
概ね順調でした。


>>検証:田植期

「芸北地域」
5月10日前後をピークに田植えが行われました。南部地帯では関係機関の指導でここ数年よりやや遅い田植えとなりました。活着は平年並みでしたが苗質がよくないほ場ではやや遅れました。高標高地(400メートル以上)で初期生育の遅れが目立ちました。
茎数(穂数)は平年並み〜やや少ない状況。特に標高が高<なるにつれ茎数は少なく、草丈も短い傾向に。一部地域では昨年と同様に「赤枯れ症状」が発生しました。

「広島地域」
田植えは昨年に比べ、やや遅め。これは出穂時期を調整して品質を高めようとする傾向があると思われます。茎数は広島市東部の田植えが遅い地域で少なめ。
地域格差はありますが草丈、茎数は概ね平年並みのようです。葉色は濃い目に推移しました。

検証:本田生育期
「芸北地域」
6月まではほぽ平年並みの生育で、幼穂形成期は平年並みでしたが、7月に入って気温が下がり出穂まで日数がかかり(通常24日間)、通常7月下旬の出穂が8月上旬になりました(標高250メートルあたり)。標高の高い地域や遅い田植えの地域ではさらに遅れが拡大した傾向です。出穂から穂ぞろいまで例年より時間がかかったという農家の声もあります。これは今年の日照不足・低温が影響したのかも知れません。
出穂は早生品種で山県郡では4〜6日、高田郡で4日程度、中生品種で山県郡は3日程度、高田郡では4日程度遅<なり、出穂の早かった昨年とは10日程度の差となりました。

「広島地域」
芸北地域同様に、昨年と比べて1週間程度遅れました。これは梅雨が長引き、低温・日照不足が影響したものと思われます。


>>検証:被害(病中害・冷害)
<<いもち>>
「芸北地域」
いもち病は昨年よりもはるかに多い傾向。箱施用薬の効果が切れたと推測される7月中下旬から葉いもちが発生。一部で穂首いもちに移行しました。また早生種では登熟後期になって枝梗いもちが発生しました。
特に防除が適期に出来なかったところや葉色の濃いところなどで発生を抑えられなかったようです。



「広島地域」
箱施用を行わなかったほ場でいもちが多発。葉いもちから穂首いもちへと移行して、かなり大きな被害となっているところもあるようです。情報収集の範囲内での話しになりますが、西部の湯来町や廿日市市佐伯地区などで多発傾向のようです。

《コブノメイガ》
「芸北地域」
中南部の中生品種に注意報が出されました。多発すれば登熟に影響しまずが、一部を除いてそこまでには至らなかったようです。

「広島地域」
発生は多い傾向でした。特に安芸地区あたりでは一部収量への影響が懸念されるほどのほ場もあったようです。

《セジロウンカ》
「芸北地域」
コブノメイガ同様に中南部の中生品種に対して注意報が発令されましたが、心配するほどの被害はないと思われます。

「広島地域」
芸北地域同様に目立った被害はないようです。


《冷害》
「芸北地域」
障害型冷害はは出穂の10〜15日前に17℃以下の低温が続<と不稔実が発生しますが、芸北町八幡ではその発生が心配される低温期があり、懸念されます。また八幡では出穂が遅れたことにより、登熟期間が秋の低温期にかかって登熟不良となって減収をまね<遅延型冷害も心配されました。しかしながら9月に入っての高温によりこの懸念もほぽ解消されました。


「広島地域」
標高の高い吉和地区あたりで発生が心配されましたが、遅延型・障害型冷害までには至りませんでした。むしろどん雨天によるいもち病の発生が、収量に与える影響の方が大きいようです。

>>検証:収量・品質
「芸北地域」
コメの品質は昨年までの高温障害もな<、概ね良いと思われます。等級低下の要因としてカメムシが挙げられますが、平年並みと思われます。
収量そのものは平年よりも少な<、標高が高<なるにつれ下がると思われます。
反面、株あたりの穂数が平年より少ない、8月が高温でないことから品質(1等米比率)は高<なると思われます。

「広島地域」
収穫期は昨年と比べ、早生種で10日程度、中生種で7日程度遅<なりそうです。
平年並みの収量は難しいと思われますが、品質面では特に問題はないと思われます。

>>まとめ
これらの様子から、NOSAI西部管内の水稲生育そのものは昨年までの様子から一変。ことしの低温・日照不足の天候は標高が高<なるにつれて大き<影響する傾向がうかがえ、全体としても収量低下の年となりそうです。
このような状況のなか、育苗箱施用剤の有無がいもちの発生に影響したと思われたり、適期防除が効果的に病虫害の発生を抑制したと思われるなど、肥培管理・水管理とい⊃た水稲栽培管理が病虫害の発生、収量、品質などで明暗を分けるひとつのカギになった年と言えそうです。
NOSA-西部に提出された水稲被害申告からも、この状況を裏付けるように、いもちなど病虫害の被害申告は、昨年よりも相当多<、イノシシなどの獣害もあわせて昨年を大幅に上回る水稲共済金支払となる見込みす。次号では水稲損害評価の結果等についてお知らせします。